2016年11月08日

本当は秘密にしておきたいけど、やっぱり読んで欲しい人間社会学科教員のオススメ本 第12回

人間社会学科 林智幸


岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社、2013年)

ブログタイトルが「秘密にしておきたい」ですが、今回オススメする本はベストセラーなので、知っている人が多いかもしれません。しかし、やはり、ぜひ、紹介をさせていただきます。

人は、いろいろな対人関係を築く必要がありますが、良き対人関係を築き、続けることは大変です。そのため、「良き対人関係を築く」に関する本がいろいろと売られていますが、その多くは「人に好かれましょう」「人に嫌われないようにしましょう」と述べるものがほとんどです。そのような中で、この本は「嫌われる勇気を持とう」と主張します。

この主張は、この本をある程度読み進めた中で出てくる意見です。本を読まない状態で「嫌われる勇気」のフレーズを見ると、「人から積極的に嫌われる行為をして、人づきあいを避けるべきだ」と書かれているのかと考えてしまうかも知れませんが、誤解です。正しい意味は何かは、実際に本を読み進めて下さい。きっと、今まで皆さんが考えたことがない、「目から鱗が落ちる」論理展開で、人付き合いの考え方を知ることができるでしょう。

ところで、この本のサブタイトルに書かれていますが、アルフレッド・アドラーとはオーストリア出身の精神科医・心理学者です。日本では、昔はほとんど知られていませんでしたが、ここ数年であっという間に有名になり、たくさんの解説本が売られています。この本もその1つで、彼の心理学(思想)である「アドラー心理学」を土台にして、対人関係の心得や人生の生き方が、「青年」と「哲人」の対話形式で解説されており非常に読みやすいものとなっています。

アドラーは自分の心理学を改訂しています。初期は「劣等感の克服」を重要視していましたが、後期には「人は優れたものになりたがる」「未来に向かって、目標を設定して、行動しようとする」など、大幅な変更がされているので、「アドラー」=「劣等感」と覚えた人からすると、この本が解説している後期アドラーの意見は意外なに感じるかもしれません。この本の見出しにも、「承認欲求を否定する」「『あの人』の期待を満たすために生きてはいけない」」「あなたは世界の中心ではない」「叱ってはいけない、ほめてもいけない」など意外性のあるものが目につきます。

どうでしょうか? 内容が気になりませんか? 決して「嫌われる勇気」のタイトルから最初に想像したものとは違った方向で、あなたに驚きを与えてくれます。是非、読んでみて下さい。また、この本には『幸せになる勇気』という続きもありますので、合わせて読まれると良いでしょう。

なお、本学では、私が担当する「教育心理学」などの授業の中でアドラー心理学を解説した授業回があります。この本を読んでアドラー心理学を知りたいと思われた方は、英和に入学して、受講して下さい。


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Posted by 静岡英和学院大学  at 13:10 │読書



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