2016年04月09日

「孤独のチカラ」(齋藤孝,2005)-読んで欲しい人間社会学科教員のオススメ本-

読んで欲しい人間社会学科教員のオススメ本
「孤独のチカラ」(齋藤孝,PARCO出版,2005)

人間社会学科 崔 瑛

 一人ぼっちで寂しい思いをすることは誰にだって辛いです。友達がいないと不安になり、自然に人とつるみたくなりますし、学校生活のうえで友達の存在は非常に大きいものでしょう。しかし、友達がいない状態を恐れるあまりに、本来付き合わなくてもいい相手と付き合う人もいるかもしれません。また、孤独な状態を避けるために、貴重な時間に無駄なことをしながら過ごしてしまう場合もあるかもしれません。

 ベンジャミン・フランクリンの言葉のように、「人生は過ごした時間の積み重ね」であり、時間を浪費しないことは、人生そのものの価値をあげ、有意味な時間を過ごせるチャンスを、より多く得られる姿勢になるといえます。

 「孤独のチカラ」の著者齋藤孝先生は、教育学者(明治大学文学部の教授)であり、教育学、身体論、コミュニケーション論等の専門書から、ビジネス書や自己啓発書に至る多数の書籍を執筆しています。その中で、今回紹介する「孤独のチカラ」は「一人でいること」の意味をポジティブに捉え、著者自身の孤独な学生時代からの経験について語りながら、人生に対する考え方や生き方への示唆をわかりやすく伝えてくれます。

 本を読み、勉強をする時間は、孤独になれる時間といえますが、勉強をする時間にも友達と一緒におしゃべりをしながら取り組むことがあり、ついテレビやラジオ、音楽を流しながら気を紛らわすこともあるでしょう。学生達の場合は、友たちや恋人と時間を過ごすことが多く、人に囲まれた環境のなかでは、自分のためだけに過ごす時間はごくわずかに限られます。しかし静かな環境で一人になること、つまり孤独になることは、知的な活動の効率や生産性をぐっと高めてくれます。

 孤独というのは、エネルギーを必要とし、厳しさを伴うものです。若い時期に、このエネルギーをため込んでいき、自分を徹底的に磨く楽しさを味わうこと、そして積極的に孤独を選ぶ単独者になることが必要であると著者は強調しています。

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 自分の中の地下水を汲み上げることは技である。それが自在にできるようになると、ほかの人から見たときにも魅力になる。
 一人きりの時間を利用して、一人でしかできない世界を楽しむ。
 これができれば年齢を重ねた時にも充実した日々が待っている。
 若いうちにこのような孤独の技法を鍛錬しておくことは大切である。
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 ここでいう孤独とは、受動的孤独ではなく、積極的選択による孤独であることが大切です。
 周りの人ともうまくやれるし、自分ひとりになっても充実にできる理想的な一人だけの時間の過ごし方を意味しています。
 本書は、孤独は「辛いものだ」、「避けるべきものだ」という、孤独に対する恐れや固定観念を少し違った角度で見直し、
 自分自身に向き合い、内面の教養を深める濃密な時間、創造の豊かさを与えてくれる時間にさせる、
 ある意味強く生きるための考え方の転換を促すものです。

 暗くて辛い、先の見えない青春の時期。
 しかしながら人生で最も美しく、未来に備えるためのその時にこそ、
 徹底的に孤独を感じ、楽しむことが必要なのではないでしょうか。
 価値ある自分らしい生き方について深く考え、知的な活動に没頭する楽しさを味わっていただきたいです。

 多くの文人や学者らが「孤独の大切さ」をそれぞれどのように考えていたかが本文のなかで紹介されており、
 それを読むのもこの本の楽しみの一つです。皆さんの人生を豊かにするためのヒントを与えてくれるかもしれないこの一冊を、 
 ぜひご一読いただきたいです。


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Posted by 静岡英和学院大学  at 00:14 │読書



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