2019年06月15日

本当は秘密にしておきたいけど、やっぱり読んで欲しい人間社会学科教員のオススメ本  第17回

書籍名:山田利博(2010)『アニメに息づく日本古典−古典は生きている−』新典社
紹介者:日本語文化メジャー 市原乃奈

オマージュ?
パクリ? 剽窃?
パロディー?
みなさんは、これらの違いをご存知でしょうか。

どれも似ているようですが、「パクり=剽窃」は他人の価値観を崩壊させる犯罪ですが、「オマージュ」と「パロディー」はそれとは違うようです。その違いは、「オマージュ」の場合、「既存の作品を尊敬することで対象となる作品の内容が自然と似てしまう、または、意図的に似せたもの」であるのに対し、パロディーは、「既存の作品の特徴を残しつつ、風刺・滑稽を感じさせるように改変されたもの」ということになるでしょうか。

例をあげると、THE YELLOW MONKEYの「You’re My Best Friend」という曲があります。今年映画でブームが再来したQUEENはわかりますか?この曲は恐らく彼らの「SO YOUNG」に、ものすごく影響を受けていることがわかります。曲の後半は、まさにイエモンがQUEENをオマージュしていると言えるでしょう。

パロディーのわかりやすい例は、みんなが大好きなアサヒ飲料の「ドデカミン」ではないでしょうか。大塚製薬の「オロナミンC」とSUNTORYの「デカビタ」を足して二で割ったようなネーミング。ボトルやラベルもそれぞれのいいとこ取りをしたようなデザイン。さらにキャッチコピーも「ファイトバクハツ飲料」。これは「リポビタンD」の「ファイト一発」と、「オロナミンC」の「元気ハツラツ」のチャンプル!!パクリじゃん!剽窃じゃん!
しかし、お互いの会社でいざこざもないようですし、明らかにパクリっぽさを残している点で、ウケねらいの賜物と言えるかもしれません。

本日私が紹介するこの新書は、古典文学とは一見何の関係もなさそうな現代のアニメや漫画も、実は古典文学と似ているのだ!というメッセージが込められた一冊です。

『美少女戦士セーラームーン』は『竹取物語』、『千と千尋の神隠し』は『古事記』『日本書紀』、『機動戦艦ナデシコ』は『物語の構造分析』(ロラン・バルト)と『オタク学入門』)(岡田斗司夫)から、オタク的要素満載のアニメと「引用」テクニックの関係を和歌の「本歌取り」に共通する「オマージュ」の例としてとりあげています。『宇宙戦艦ヤマト』と『機動戦士ガンダム』そして『新世紀エヴァンゲリオン』という流れで『機動戦艦ナデシコ』が着地点。なんだかすごく納得してしまいました。

『サクラ大戦』は「歌舞伎」をオマージュし、日本アニメ・特撮に見られる「決めポーズ」や「決め台詞」は歌舞伎の「見栄」にあるのではないかと仮説を立てています。
『プリキュア』シリーズは、『美少女戦士セーラームーン』との類似性や差異性をあげつつ、日本古典文学が息づいている部分を探っていくという流れです。

あなたが好きなアニメや漫画も、実は古典文学作品のオマージュかもしれませんよ。
さぁ、この一冊と一緒に日本語日本文化の世界へ旅しませんか?



引用画像




Posted by 静岡英和学院大学  at 01:08



削除
本当は秘密にしておきたいけど、やっぱり読んで欲しい人間社会学科教員のオススメ本  第17回